平成18年4月24日

医療観察法における鑑定入院の問題点と見解

                    日本精神神経学会
                      法関連問題委員会
委員長富田三樹生


医療観察法における鑑定入院は、検察官の申し立ての後に、対象者が医療観察法による医療が適切であるかどうかを鑑定するために審判の前に行なわれる。そこでは3カ月を限度に「鑑定および医療的観察」を行なうこととなっているが、法が施行された現在、鑑定入院を巡ってさまざまな問題が浮き彫りになってきている。当委員会は、法の凍結を求める立場であるが、鑑定入院に限っても看過できないものがあると考える。

以下問題点を列挙して見解を述べる。
    1) 鑑定期間において対象者は急性期の精神病状態にある場合が多いが、鑑定が優先され必要な医療が速やかに提供されないことが起こっている。厚生労働省は精神保健福祉法と同様な医療の提供が可能であるとしているが、その法的根拠と責任があいまいであり、鑑定入院医療機関により医療のあり方にばらつきが大きい。また、鑑定入院中の処遇についての法的規定もなく、厚生労働省の通知によって精神保健福祉法に準じるとされているのみである。
    従って、鑑定人と鑑定入院医療機関の間の治療及び処遇についての意見調整にも問題が生じている。

    2)  鑑定終了後も、審判決定まで引き続き鑑定入院機関に入院が継続されるが、その間の処遇と治療の根拠と責任の所在はさらに不明確である。

    3)対象者がどのような行為をどのような事情のもとで行ったか、その病歴や症状など対象者についての基礎的な情報がないまま鑑定入院医療機関に送致される場合が多い。

    4) 鑑定後の審判により通院命令が出ても、結果として鑑定入院医療機関に医療保護入院や任意入院とされることとなり、社会復帰調整官の実際的援助もなく、また期待もできないまま、社会復帰機能まで鑑定入院医療機関が負わされている事例がある。

    5) 軽微な他害行為を行った者が申し立てられたり、起訴前鑑定により人格障害と診断された者が申し立てられたりするなど、検察官による申し立てが拡大運用される場合がある。

    6) 他害行為により、措置入院を経て措置解除となり、その後通院継続しながら就職している者について、あらためて医療観察法による申し立てが行われ、鑑定入院させられた事例が報告されている。ここに医療観察法がその立法当初から有する、医療に名を借りた懲罰を与えるとする保安的思想が表れている。

以上から次の2点を提言する。
    (1)医療観察法における鑑定入院を「医療的鑑定」と明確に位置づけ、鑑定入院医療機関の役割から対象者の身柄を確保する機能(拘置所的機能)を極力排除すべきである。
    鑑定入院医療機関は医療機関であるにもかかわらず、医療機関の機能とともに拘置所的機能をも法が押しつけてくることからくる問題点である。
    医療機関は目前の急性期状態にある対象者を、医療行為と関係なく、司法上の理由から漫然と対象者を拘禁しておくことはできないのである。医療観察法における鑑定入院は、対象者の社会復帰とその方略まで視野に入れた治療適合性鑑定のための入院として位置づけ、その鑑定は医療の適切な実施を踏まえるものと考える必要がある。
    その際、「同意に基づかない医療を含む医療内容と処遇基準」、「身体合併症やさまざまな事故に対する責任の所在と対処の基準」、「鑑定入院中の人権保障的手続き」などについて、国あるいは裁判所の責任において明らかにする必要がある。

    (2)鑑定入院医療機関における鑑定には「起訴前鑑定の妥当性判断」をも含むことを法的に明確にすべきである。また、検察官の医療観察法への「申し立て判断の妥当性」についても、対象者の医療及び社会復帰の観点から鑑定医が意見を述べることを可能とすべきである。


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