ドレスデン宣言
強制的精神医療に反対して
ドレスデン(ドイツ)2007年6月7日
ヨーロッパ精神科(元)ユーザー・サバイバー・ネットワーク(ネットワークのドイツの参加組織であるBundesverband Psychiatrie-Erfahrener(訳注 連邦精神医療体験者協会)をふくむ)は、姉妹組織の世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク、および緊密に協働しているマインドフリーダム・インターナショナルとともに、2007年6月6日から8日にドイツドレスデンで開かれる、世界精神医学会(WPA)の「強制的精神医療 その包括的再検討」という会議に合わせ、強制と精神医療に対して私たちの共同の立場を明らかにするこの声明を発する。われわれ自身が強制的精神医療を体験し、そして私たち自身の生活と生命をそして私たちの会員、仲間友人の生活と生命を強制的精神医療が破壊してきたことを知っているがゆえに、われわれ組織はこの問題について語りうる唯一の立場に立っている。
私たちの組織は強制という行為に対してされた側の本人の存在を示していくために、WPAの会議に数カ国から代表を参加させる。精神医療によって強制を受けた人間として、われわれはこの種の強制に関して決定的な発言をする倫理的根拠を持つと確信している。
われわれは団結してあらゆる強制と強制的精神医療の実践の終結、そして精神医療に代わるオールタナティブの発展を呼びかける。
私たちはとりわけ最近国連総会で採択された「障害者人権条約」を取り上げる。この条約は精神保健体制を自ら体験した人権活動家の参加によって起草されたものである。すべての人々が平等に取り扱われるべきであること、そして誰一人として障害、病気、あるいは心身の不調というレッテルを根拠として自由を否定されるべきではないと考え、世界中の人々がそして人々の代表である政府が一切の留保なしにこの条約を批准すべきであるとわれわれは確信している。条約は障害に基づく差別なしに自由なインフォームドコンセントの権利を認識しているのであるから、われわれすべてが精神科医療を拒否する権利がある。さらに重要なことは、条約は、支援が必要な人に対しては意思決定を支援する強制的でない支援へのアクセスを提供することを政府に求め、他のものと平等に障害者に自らの決定を下す権利(法的能力)を保障していることである。
われわれは世界保健組織(WHO)がすべての非自発的電気ショック(電気痙攣療法=ECTとしても知られている)に反対の立場を明らかにしたことを記しておく。貧しい発展途上国においては麻酔なしで行われていることが多いことも含め、非自発的電気ショックは国際的に増加している。
WHOとヨーロッパ評議会は、また感情的苦痛を持つ人々に対して、烙印を押すことのないセルフヘルプの新たなアプローチの必要性についても宣言した。
精神医療を体験した人々の組織は強制よりむしろ平等と選択に基づいたセルフヘルププログラムの開発において指導力を発揮してきており、地域社会での暮らしへの統合に向けて人々へ援助し成果をあげてきた。私たちは、強制がリカバリーを不可能としていることを確信する一方で、人が、自由意志を持った人として尊重されるときにのみに癒しがありうること、そして倫理的アプローチに基づく、人を全体的に見つめ、リカバリーを支援する精神医療に代わるオールタナティブがある場合にのみ人は癒されることを私たちは確信している。
われわれは世界中のさまざまな国で強制的精神医療行為が増加していることを認識している。こうした強制医療行為の中には、自宅に暮らしていながら意思に反してあるいは自由を剥奪される中で向精神薬を服薬することを求める裁判所による治療命令も含まれている。こうした医療行為は、条約が位置づけた私たちの人権を侵害するものである。われわれは人権を支持するすべての人々に、われわれとともにそしてわれわれを支持し、強制的精神医療行為のない社会を求めていくことを呼びかける。そしてわれわれは自発的なセルフヘルプサービスとわれわれの人間性と尊厳を尊重した精神医療に代わるオールタナティブのために十分な資金と支援を呼びかける。
European Network of (ex-)Users and Survivors of Psychiatry (ENUSP) World Network of Users and Survivors of Psychiatry (WNUSP) MindFreedom International (MFI) Bundesverband Psychiatrie-Erfahrener (BPE)
長野英子訳 原文は以下に掲載
http://www.peter-lehmann-publishing.com/articles/enusp/dd-english.pdf
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